災害時の被災状況とリスク対策

頻発する大規模地震と対策の必要性

近年震度6を超えるような大規模地震が頻発しており、水道施設においても大きな被害を受けています。
水道施設は、市民生活や社会経済活動に不可欠の重要なライフラインであり、地震などの自然災害発生時における被害の最小化、復旧の迅速化の為に、管路の耐震化と併せてバルブやボックス周辺の対策も進めていく事が重要となります。

地震によるバルブボックス類の被害状況

2016年の熊本地震においては、4月14日に発生したいわゆる前震と呼ばれるM6.5の地震に続き、ほぼ1日後の4月16日に本震としてM7.3の地震が熊本市の東部から阿蘇市付近を震源に発生し、どちらも最大震度7を記録し、甚大な被害が発生しています。
この地震において、バルブやボックスがどのような状況になっているのかを確認するため、当工業会としても地震発生後の被害状況調査を行い、以下のような不具合が確認されました。

不具合により想定されるリスク

・「調整部やボックスのずれ」によりボックスの耐荷重性能が不足し、車両通行により調整部やボックスが破損する恐れ
・「ボックス内への土砂の堆積」や「ボックス内の浸水」により、バルブキャップが埋没し、バルブ操作に支障をきたす懸念
・「バルブボックスの傾き」により、バルブの開閉キーがセットできず、バルブ操作に支障をきたす懸念

二次的な被害拡大や応急復旧遅延の懸念

応急復旧作業における現地の状況

地震発生後の被害状況調査と合わせ、被災された事業体、及び復旧支援に当たった事業体に当時の状況についてヒアリングを行い、以下のような声がありました。

被災された事業体の主な声

・空気弁や補修弁の不具合事例として170件ほど発生。
主な不具合:「フランジ部のボルトの伸びや破断による漏水」や「土砂による埋没、フロート弁の錆付き等」
・地震発生以前にボックスが舗装で埋められており、対象となるバルブが発見できず。
・土被りが深い箇所で、地下水位が高く、開閉キーを差し込むのが困難な箇所があった。

復旧支援に当たった事業体の主な声

・土地勘がなく、また道路の寸断や渋滞により、対象場所への移動に時間を要した。
・大量のガレキで道路が覆われ、対象の路線、バルブの特定に時間を要した。
・管路図と現状の差異により、路線の特定に時間を要した。
・弁栓番号等がなく、調査すべきバルブが特定できない。
・バルブの開閉状態や閉栓方向がわからず、確認に時間を要した。
・バルブやボックスの傾き、バルブの埋没等で開閉キーが装着できす、鉄蓋を撤去して操作することも発生した。

総合的な地震対策の必要性

被害状況や事業体にヒアリングした結果を踏まえ、「被害の最小化」、「復旧の迅速化」のために、管路の耐震化を併せて、以下のようなバルブやボックス周辺の対策も進めていくことが重要になります。

バルブをすばやく発見する為の対策

がれきに埋まった鉄蓋/管路位置を特定する為の対策
日常点検によるバルブ台帳等の整備。土砂災害や津波被害時の対策としても有効になります。

バルブ操作に必要な情報、器具の整備
緊急の確実なバルブ操作の為の対策
開閉状態、閉栓方向、回転数等の必要情報整備
蓋やバルブの開閉キー等の統一
復旧支援で来られる外部の事業体への対応
バルブを確実に機能させる為の対策

バルブの傾斜/埋没への対策
液状化によるバルブ埋没への対応
地震動によるバルブ類傾きへの対応
地震動によるボックスのずれ/破損対策
一体化により土砂流入等を防止

バルブの傾き
バルブキャップの埋没

調整部やボックスのずれ

調整部やボックスの破損

ボックス内への土砂の堆積

ボックス内の浸水

バルブやボックスの傾き

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