※ 引用文献/水道用鉄蓋類維持管理マニュアル2004
 水道用鉄蓋類やボックスの据付け方法について、一般的な施工手順(ボックス、鉄蓋類の順で据付け)に従って記述した。記述内容は、施工要領、施工時の安全管理、製品保管上の注意事項等である。
  水道用鉄蓋類やボックスの据付けは、製品に損傷が生じたり、製品本来が持つ性能に支障が生じたりすることのないように、慎重かつ確実に施工する必要がある。また、製品の保管や運搬等においても、同様に、その取扱いに十分な注意が必要である。
  なお、実際に現場で鉄蓋類を据付ける際には、各製品に添付されている取扱説明書や施工手順書等に従って施工する。
2.1ボックスの据付け
  ボックスの据付けは、次のような手順で行う。
1.基礎地盤は、据付け後にボックスが沈下しないよう、事前に十分転圧する。
2.底版は、水準器等を用いて水平度を確認しながら、道路形や鉄蓋の開閉方向等を勘案し、所定の位置に据付ける。
鉄蓋と路面との高低差は、ボックス上部と鉄蓋の受枠との間(以下調整部と称する)に、モルタル充填又は調整リングを挿入して調整する。
3.ボックスの各部材は、接合面をよく清掃した後、接合材を全周に盛り付けて、均等接合する。
※表2.1鉄蓋及びボックスの施工チェックシート参照

【解説】
1.について
  一般に、ボックスの基礎地盤は、埋め戻し土などの不安定な土質であることが多い。そのため、車道部などでは、施工後に基礎地盤が変状して、蓋や周囲路面に沈下を生じるおそれがある。このような現象を防ぐには、事前に基礎地盤を十分転庄するとともに、据え付け後、仮舗装の状態で、埋め戻し土を含めて地盤を出来るだけ安定化させた上で、本舗装を施工する。
2.について
  ボックスの底版の据付けは、将来、バルブなどの操作・点検が安全、迅速に行えるように、鉄蓋の据付け位置を確認して施工する。すなわち、鉄蓋の位置や開閉方向は、周辺の道路形や縦断勾配等を合わせて、将来の維持管理用に決めておく必要がある。したがって、ボックスの底版の据付け時点においても、その位置や方向を確認して施工する必要がある。
  底版は、原則として、水平に据付ける。路面と鉄蓋との高低差は、調整部(図2.1参照)に、モルタル充填又は調整リングを挿入して調整する。しかし、路面などが急勾配の場合には、受枠のアンカー穴とボックスの固定用ボルト穴との離れが大きくなって、前述の方法では、鉄蓋の傾きを調整して固定化することが難しい。(注5)。
  このような場合には、鉄蓋の勾配が最終的に路面と同じような勾配に仕上がるように、あらかじめ底版を含めてボックス全体を路面勾配に合わせて据付ける必要がある。

注5 前述の調整部を設ける方法で、調整の可能な傾斜限界角度の目安は、 約7°程度である。
3.について 
 接合面に異物等が付着した状態でボックスを複合すると、その部分に偏った応力が発生して破損などの原因となる。そのため、事前に複合面の清掃を十分に行い付着異物などのない状態でボックスを据付けなければならない。また、ボックスの強度及び耐久性を保持するには、接合部の荷重伝達に断絶が平均化されるように、接合材を全周に盛り付けて、連続かつ均等に接合する(図2.2参照)。

 
 
2.2 鉄蓋の据付け

2.2 鉄蓋の据付け
  鉄蓋の据付けは、次のような手順で行う。
1.鉄蓋の受枠は、ボックス上部壁にボルトで固定する。
2.受枠と上部壁との間の調整部には、無収縮モルタルなどを隙間なく充填する。
  その際に、調整リングを使用する場合は、ガタツキなどの原因となる不具合などが生じないように注意して挿入する。
3.蓋を受枠に取付ける際には、事前に、蓋の外周や底面、受枠の内周等をよく清掃し、土砂などを挟み込まないように注意する。
※表2.1鉄蓋及びボックスの施工チェックシート参照

【解説】
1.について
  鉄蓋の据付けは、最初に受枠をボックス上部壁にボルトで固定する。通常、この作業で鉄蓋の高さを調整するとともに受枠を含めた全体のガタツキを防止する。しかし、この際に、ボルトの締めつけが緩いと、施工後に受枠全体が動揺し、締めすぎると受枠に変形が生じる。いずれの場合も、鉄蓋全体のガクッキの原因となるので、施工には十分注意する。
※ナットの締め込みによる受枠の変形の発生については、「参考3.ナットの締め込みによる受枠変形検証試験結果」を参照のこと。
  なお、このようながたつきの発生を防止するには、別途、枠変形防止用高さ調整用部材(注6)を使用して高さ調整などを行う方法がある。
注6 枠変形防止用高さ調整用部材 ボックスに鉄蓋の受枠を固定する際に、ボルト締めすぎると、受枠に変形が生じて、蓋とのなじみが悪くなって、鉄蓋全体のガタツキの原因となることがある。ボルトを締めすぎた場合でも、受枠に過剰な応力が伝達されない構造になっていて、ガタツキ現象を防止するとともに、高さ調整作業を容易にする目的も含めて、新たに開発された施工用の部品である。

 
 
2.について
  調整部の充填モルタルは、その量や強度が不足すると、施工後に隙間が生じて受枠全体のがたつきの原因となる。その防止には、無収縮モルタルなどが使用される。
  モルタルの充填には、従来、一般の無収縮モルタルを使用した目締め方法(注7)が用いられていた。最近では、無収縮高流動高強度速硬性モルタル(注8)を充填する方法が多く用いられるようになった。この方法の採用によって、施工精度のばらつきが解消され、作業者の熟練度に関係なく適確な施工が可能となった。
注7 目締めによる方法 モルタルをボックス上部壁に敷きならし、その上に鉄蓋の受枠を置いて、はみ出したモルタルを側面から手で押し込み、表面をコテ仕上げする方法である(図2.4参照)。
注8 無収縮高流動高強度速硬性モルタル セメントに各種の混和材を配合し、狭い隙間の充填材料に適した性状を発現させたモルタルである。強度的には、施工後1〜3時間程度で、実用に適した強度に達するので、交通量の多い車道部などで、早期の交通開放が必要な工事に使用できるメリットがある。また、流動性にも富んでいるため、流し込み方式の施工に最適であり、従来の目締めによる方法と較べて、施工面で安定した施工精度が確保できるメリットもある。(図2.5参照)。
また、調整リングを使用する場合は、不具合の原因とならないように、使用場所に応じた材質の選定が必要である。
  調整リングの種類には、材質別に、レジンコンクリート製、鉄筋コンクリート製及び再生プラスチック製(注9)等がある。

 再生プラスチック製調整リングは、積み重ねる枚数が増えると、車両荷重による挨みなどが発生し、不具合の原因となるおそれがある。そこで、重車両の交通が頻繁な車道部等では、高強度レジンコンクリート製調整リングを使用するとよい。
注9 再生プラスチック ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂製品を粉砕リサイクルして再成形したプラスチックである。
3.について
  蓋と受枠との接触面に小石、土砂等の付着物があると、蓋がきちんと受枠内に納まらなかったり、それが原因となってガタツキが生じたりする。したがって、鉄蓋の開閉作業時にも、必ず接触面を丁寧に清掃する必要がある。
  また、蝶番付きの鉄蓋の場合には、受枠の取付け穴(蝶番座)に蝶番が挿入されていることを確認した上で、蓋を閉める必要がある。特に、角形鉄蓋の場合には、蝶番座に確実に蝶番が挿入されていないと、蓋が落下するおそれがあるので十分注意する。

2.3 ねじ式弁筐の据付け
2.3 ねじ式弁筐の据付け
  ねじ式弁筐の据付けは、次のような手順で行う。
1.基礎地盤は、据付け後に弁筐の沈下、傾斜等が発生しないように、事前に砕石などを敷き均して十分転圧する。
2.路面と弁筐との高さの調整には、上部枠を回転させて、下部枠との接合部に設けたねじで調節する。特に、傾斜地に据付ける場合には、将来の維持管理に支障とならないように、弁筐全体の傾きなどに十分に注意して施工する。
※表2.2 ねじ式弁筐の施工チェックシート参照

【解説】
1.について
  ねじ式弁筐は、据付け後に、弁筐の沈下、傾斜等が発生すると、バルブなどの開閉軸に対して偏心が生じ開閉作業の支障となる。そのため、基礎地盤は、事前に砕石などを敷き均して十分転圧し、据付け後に底版などに沈下を発生させないように、十分な対策が必要である。
2.について
  ねじ式弁筐は、上部枠と下部枠との接続部に付けたねじ部を回転させて、上部枠を上下して高さを調整する。そこで、蓋と路面との高さの調整は、弁筐の据え付けた後に、上部枠を回転させて調節する。ただし、傾斜地の場合には、将来、蓋の開閉やバルブの操作等に支障とならないように、弁筐の傾きに十分注意しなければならない。そのため、現地状況と蓋の勾配や開閉軸の傾きとの整合性を常に確認しながら、慎重に施工する必要がある。
  なお、上部枠の上下の限度は、路面荷重などの安全性に配慮した当該製品の仕様による範囲内である。

 
※ 引用文献/水道用鉄蓋類維持管理マニュアル2004 
3.ナットの締め込み方による受枠変形検証試験結果
  鉄蓋を勾配のある設置場所などに据付ける場合、受枠を固定させるナットの締め込み方によっては、受枠に変形が発生して、蓋のガタツキの原因となるおそれがある。そのため、このようなケースのナットの締め込み方と受枠の変形を検証した。その試験結果を示す。
[条件]
・高さ調整用部材は、厚さ約1cmの鉄板を使用し、鉄板の枚数によって高低を付けて設置勾配を設定した。
・測定した2方向の変形量の差を変形度として設定する。 
  ただし、円形鉄蓋は受枠変形による最大内径と最小内径の直交方向、角形鉄蓋は長手と短手の2方向とする。
[試験方法]
@受枠の2方向に変位計を取付ける。
Aトルクレンチにてナットを締付ける。
B受枠の変形量を変位計にて読み取る。
[試験結果]
円形鉄蓋の締付けトルクと受枠の変形度
設置勾配
(%)
締付けトルク(N・m)
39.2
58.8
78.4
98
0
0.37
0.5
0.64
69
4
0.91
1.13
1.42
1.63
12
0.89
1.37
1.71
1.82
内径600の試験鉄蓋を使用。
角形鉄蓋の締付けトルクと受枠の変形度
設置勾配
(%)
締付けトルク(N・m)
39.2
58.8
78.4
98
0
0.12
0.35
0.5
0.59
4
0.22
0.4
0.51
0.64
12
0.31
0.41
1.31
1.74
内径500x400の試験鉄蓋を使用。
[考察]
  試験結果は、円形、角形の鉄蓋とも、勾配を付けた状態で、受枠をセットするためにナットで締め込むと、受枠に変形が生じていることを示している。蓋と受枠とも製造時に精密加工されているので、受粋が変形すると蓋が正常に納まらないため、ガタツキが発生する。
  したがって、このような不具合を防止するために、受枠の変形を生じさせない枠変形防止用高さ調節用部材を使用する。